入賞作品
大賞
優秀賞
審査員
きむらゆういち(絵本作家)/ 藤本ともひこ(絵本作家)/ 村上しいこ(児童文学作家)/ 株式会社ニコモ
講評
きむらゆういち 氏
大賞「あたまのうえのたまご」
とても面白いナンセンス絵本である。
あたり前って何だろう。世の中の常識って?そんなことを考えさせられる奥の深―い話だ。理由などいらない。だってそうなんだから、だから面白い。でも多様性の時代、みんなタマゴでなくちゃいけないの?みんなひよこでなくちゃダメなの?
まだまだ発展する可能性を感じるテキストだと思う。
ほかにもいくつか候補があったが今回はタマゴものが多かった。その中でも群を抜いて絵本にしたら面白いと思えるこの作品を選ばせていただいた。
主人公の表情もそれぞれの場面で絵になったらどうなるか楽しみである。
優秀賞「どうぶつ まんいんでんしゃ」
絵本の絵が思わず浮かんでしまうようなテキストである。
動物たちのゆずり合いがほほえましい。
どうせなら満員電車の中がはめ絵パズルのようになっていて、次々にお客さんたちが隙間にはまっていっても面白いと思った。
さて、どんな絵になるのかも楽しみである。ただ最後のぞうさんだけ押すのは少し気の毒になった。せっかくの電車なのだからなんとかしてあげたい。
例えば、ラストに登り坂はぞうさんが押して、その後の下り坂はぞうさんが乗って、「ゴー つぎは しゅうてん どうぶつえん」
ラストに登り坂はぞうさんが押して、その後の下り坂はぞうさんが屋根に乗って、「ゴー つぎは しゅうてん どうぶつえん」にしたら、ぞうさんも乗れるのでは。
それにしても、絵本にするために生まれてきたようなすばらしいテキストである。
藤本ともひこ 氏
「絵本の言葉について」
ぼくは絵も描く絵本作家です。言葉も書く。そのふたつの兼ね合いというか、相乗効果というか、化学反応というか、そういうことを、いつも目指しています。でないと作っていて面白くない。どちらかが饒舌というのはバランスが悪い。とぼくは思うのです。絵本が求めるのは、童話のような文章ではありません。童話は文だけで思い描けるので、絵は挿絵イラストになってしまう。それはそれで素晴らしいものもありますが、やっぱり絵本ならではの世界を見たい。そういう目で今回テキストだけをみせていただきました。
大賞「あたまのうえのたまご」
たぶん表紙からしてつかみはオッケーな絵本になります。ナンセンスセンスがいい方です。主人公の不安をきっちり描きつつ、ばかばかしい設定を絵に任せる潔さも感じました。まさに絵でどこまで真面目にトンデモ世界を見せられるかが楽しみなお話に仕上げていました。素晴らしい。ただ1点。基本は某TV「世にも奇妙な物語」寄りの展開でいくので、結末までオトナチックな仕上がりは、こども絵本としては不安定かと思いました。絵本の言葉の必要な分だけ的確に書ける方なので、読ませるし、見せられる。で大賞!
優秀賞「どうぶつ まんいんでんしゃ」
読んですぐに絵が浮かんだ。動物で満員の電車がやってくるというのが、絵的にきっと面白い。そう予感させるシチュエーションでした。後からやってくる動物のお客さんのセレクトのうちコアラがキリンのクビにぶら下がって乗れるというのが一番はまりましたが。他はもっとたくさん考えて厳選するとより楽しくなるんじゃないかしら。最低30個くらいは考えた?ちなみに11場面は物足りなくかんじました。この設定なら15場面でたっぷり笑わせてください。
村上しいこ 氏
最終選考に残った作品は審査員それぞれに推しがあり難航したけれどとても楽しい賑やかな審査会でした。
大賞の「あたまのうえのたまご」は、じわじわ来る面白さと不思議さのバランスが絶妙で、絵で見せるナンセンス絵本としてはいい作品だと思いました。
全体的に卵の絵なんだけど落とし所も上手く描かれていると感じました。
優秀賞になった「どうぶつまんいんでんしゃ」は絵のイメージが浮かびやすく絵本としては完成度が高い作品ですが、ページををめくるときのわくわく感は弱いと感じたこと、ラストの盛り上がりを期待したけどスン…と終わってしまったのがもったいない!
総評としては読んだことがあるような作品が多く、タイトルで期待したけどあれ?と思う作品や発想は面白いのに内容が追いついてない作品、絵本と童話の区別が付いていない作品もありました。2作品しか賞にあげられなかったけど個人的には落とすのが惜しい作品もあったのでまた挑戦してほしいと思っています。
YOMO絵本テキスト大賞 事務局
はじめてのYOMO絵本テキスト大賞となりましたが、予想を上回る483作品のご応募をいただきました。
作品をご応募いただいた皆さま、ありがとうございました。
受賞された皆さま、おめでとうございます!
全ての作品を読ませていただき、最終選考作品は20作品に絞らせていただきました。
審査委員の先生方には厳正に審査していただき、
票が割れたため非常に難航しましたが、有意義な審査会となりました。
この度は応募して下さった皆さまに、心より感謝申し上げます。
最終選考作品(受賞作を除く、順不同)
「なっちゃんクイズ」青木 梨夜
「あかいスコップ」しもだ ゆきえ
「チェックおじさんとみずたまおばさん」ふじかわ たかこ
「えいようせんたい タマゴンジャー」いたがき けいじ
「あつまれ!よいこのみんな」マダスナオ
「プレゼントはびっくり」たかはしあきこ
「たまご銭湯」メグマノ
「絵本の中では」いしほみずや
「おならマメ」なかたこうじ
「ヒッキーニくん」山本 佳代子
「おしゃぶりチュッチュ」いしどう あけみ
「きれるかしら?」馬田 茶
「さかあがり できないといけないの?」こばやし のりこ
「雲の上の縁日」いしかわ なおき
「さかなよほう」ふじの さちこ
「おなられんめい」よしだ とむ
「いちにちかみさまキャンペーン」岩野 聖一郎
「ひろおさんちには ヒーローがいる」比良 泰晴
主催
株式会社ニコモ